雇用統計は非常に強かったが、新たに生じた日米貿易摩擦懸念がドル円の上値を重くした(9/3-9/7まとめと翌週の予想)

今週の為替(FX)市場についてまとめました。
今週起こった出来事やニュース、それをもとに来週以降の相場について自分の見解を予測しています。リアルタイムの為替(FX)のニュースについてはTwitterにて発信しています。

9/3-9/7の為替相場

良好な雇用統計の結果を受け、米ドルは一時買われるものの…

ドル円は111円前半を中心とする上下1円50銭程度のレンジで推移して、最終的に前週から10銭程度ドル安・円高の110.00付近で週の取引を終えました。

9月第一週と言うことで、米国で雇用統計をはじめとして、多くの重要な経済指標の発表が相次ぎました。
ADP雇用統計やISM非製造業指数は予想を下回る結果になったものの、ISM製造業指数は予想を上回り、週の最後に発表された雇用統計は市場予想を大きく上回る強い内容が発表されました。

雇用統計に関する一般的なことについては、過去にまとめた以下の記事にも詳しく書いています。

そして、9/7のホルスタインの今日の一言でも書きましたが、雇用統計は数多くの労働に関わる数値が発表されます。

一般的なのは非農業部門雇用者数変化や失業率なのかもしれませんが、ここ2年ぐらいの雇用統計は「平均時給(平均賃金)」に対するマーケットの反応が特に大きくなっています。

失業率や雇用者の変化よりも、現在就労している人達の平均時給が上昇することの方が、米国経済において消費をより活性化させて物価上昇を伴い、利上げを行なう必要性が高まると考えられているからです。

9/7に発表された雇用統計の平均時給の前月比は市場予想+2.7%に対して+2.9%というリーマンショック後の2009年以来最大の伸び率となりました。
この良好な雇用統計の結果を受けて、米国の今後のインフレ期待が大きく高まり、利上げをより強く見込むようになったことから米ドルは買われて反応しました。

トランプ大統領の発言で貿易摩擦懸念が高まり、ドル円反落

しかし、雇用統計後に上昇していたドル円は、トランプ大統領の以下の発言によって反落することになりました。

  • 中国に対して、今後発動すると宣言している中国からの輸入品への2000億ドル相当の関税に加えて、更に2670億ドル相当の中国からの全輸入品に対して追加関税を課す可能性について言及。
  • 前日(9/6)に続き日本に対しても、米国の対日貿易赤字を削減するように要請する。また日本に対して新たな自由貿易協定を結ぶように求めるつもりで、それに応じないならば制裁措置を発動すると言及。
2018年になってから、中国を中心に貿易摩擦懸念が高まる度に市場はリスクオフ方向に推移していきましたが、この上記のトランプの発言は、中国・日本双方に対して市場の予想を上回る強硬な態度を示すものでした。

そのため、今回も金曜日のNYクローズ直前に出たこれらのトランプの発言を受けて、米国株始め世界の株は下落する流れになり、為替もドル円が下落するリスクオフの反応をみせました。

新たな問題として浮かび上がってきた日米貿易摩擦懸念

上で書いた通り、今週は9月6日・7日と2日続けてトランプがついに、米国の日本に対する貿易赤字の削減を求めると発言しました。

米国は中国と同様に日本に対しても、貿易赤字(米国からの輸出よりも、米国が輸入する金額の方が大きい状態となっています。
今までトランプ政権は様々な国に対して、米国からの輸入を増やすように関税を下げるように要求したり、逆に米国への輸出品に対しての関税を強化するなど、貿易面での現状を改善するように要求し続けてきましたが、日本に対しては現在の貿易の状況を変革するように求めてくることはありませんでした。

しかし、今回はついに日本に対してもそのような要求を今後していくための口火を切ったのです。
こういった日米の貿易摩擦問題は過去、1990年代に米国がビル・クリントン政権だった時代にも生じました。そしてそれは日本経済にも大きな打撃を与えました。

今後、トランプが本格的に日本に対してどのように貿易戦争を仕掛けてくるのかはわかりませんが、米国とどこかの国が貿易に関して軋轢が生じることは基本的に世界のリスクオフ要因となります。

また、貿易赤字の議論になると、どうしても必然的に日本に対して為替をもっと円高にするべきだとの議論も出てくることになります。
そう考えると、この日米貿易摩擦が過熱すればするほど、マーケットはドル安・円高方向に反応しやすくなると思います。

イタリアの予算問題:財政懸念がやや後退

その他、今週は欧州でも色々と動きがあったのでそれを紹介します。

今週は週初1.159付近でスタートしたユーロは1.156付近で週末を迎えて、小幅下落したものの週半ばには1.166付近まで買われる場面がありました。
買われた理由は色々とあると思いますが、その一つにイタリアの財政懸念が弱まったことが挙げられると思います。

上のリンクにより詳しく書きましたが、現在のイタリアは選挙で票を集めた
  • 五つ星運動
    有名コメディアンが最近立ち上げた、ポピュリズム政党
  • 同盟
    移民排斥などを唱える極右政党

この2党が連立与党を形成しています。

国民の支持率は非常に高いのですが、国際金融市場においては高い評価を受けていません。
国民の支持率が高まるような政策を行うかもしれないのですが、それは財政を度外視するようなものになるとの懸念が高まっています。

現在、イタリアは10月までに予算の原案を作成しなければなりませんが、財政を拡大させるような内容になるとの懸念があります。
すなわち、借金が拡大するような予算案を作るのではないかと金融市場参加者から危惧されています。

EUは加盟国に対して、対GDP比3%以内に財政赤字を抑えるように求めていますが、これを上回るような予算を作るとの可能性が先月以降、議論されるようになっていました。

しかし、今週はイタリアのディマイオ副首相やサルビーニ副首相が相次いで、対GDP比2%以内に財政赤字を抑えることを目指すとの発言がありました。
この発言を受けて、イタリアの財政懸念が緩和されて、8月以降に売られていたイタリア国債も買い戻される展開になり、ユーロも上昇する場面が見られました。

ただし、まだ、この問題も今後どうなるのかはわかりません。
来月に向けて、イタリアの予算案が今後どうなっていくのかに注目です。

英国のEU離脱問題

先週、英国のEU離脱問題に関して、EU側の首席交渉官の発言によって、英国とEUとの交渉問題にやや楽観視が広がり、ポンドが買われる場面がありました。

今週も、EUのリーダー的ポジションのドイツが、英国の離脱に際して、今までのように多くのことを要求しないように柔軟化していくとの報道が出ました。
後にドイツ政府によってこの報道は否定されたものの、離脱に際して今後の英国とEUの協議がスムーズにいく可能性が高まったと市場の楽観視が強くなったことから、週半ばのこの報道の直後にポンドが買われる場面が見られました。

まだまだこの英国のEU離脱に向けた交渉がどうなるかはわかりませんが、今週と先週でやや楽観視が広がってきています。
そして、ポンドドルも週初から小幅上昇する1週間になりました。

来週の為替相場

ドル円は下落か?

ドル円は下落すると予想しています。

今週は鳴りを潜めていましたが、新興国市場が依然として安定していないことを考えると、相場は円高に推移する可能性は低くはないと思います。

また、上述の通りトランプが日米貿易戦争を示唆しました。
本当にこの問題が今後大きくなっていくのかどうか断定はできませんが、もし本格的に米国がこの問題を日本と交渉するような展開になった時には、ドル円は間違いなく売られると考えています。

雇用統計が良かったことや、米国債の金利が上昇していることなど、ドルが上昇する要因も少なくはないものの、それ以上に日米の貿易摩擦は材料視されやすいと思います。
来週はドル円は下がる可能性が高いと考えていて、現時点では9月はドル円は下がる展開になりやすいと考えています。