『ドル円が下がると株価も下がるのですか?』という質問をいただきましたのでお答えします。
結論から言うと、ドル円が下がる局面ならば、株価も下がりやすい局面であるです。
何故かと言うと、ドル円が下がる局面は『リスクオフ』であることが多く、株価も下がりやすいためです。
なぜそんなことが言えるのか?の前に、まず『リスクオフ』と『リスクオン』(リスクオフの反対の局面)の意味から説明します。
リスクオンとリスクオフとは
リスクオンとは、マーケットの参加者がリスクをオンしたい(=リスクを取りたい)状態のことです。
すなわち、景気が良くなると判断して投資行動する人が多い時をリスクオンと言います。2016年11月にトランプ大統領が当選して好景気期待が高まって株価が急上昇しましたが、あれがまさにリスクオンの状態でした。
一方でリスクオフはマーケットの参加者がリスクをオフしたい(=リスクを取りたくない)状態です。
どこかの国で地政学リスク(軍事リスク)、自然災害、政治的、経済的混乱などが生じた時などにこの状態になります。リーマンショックや東日本大震災後、米中貿易摩擦問題などは典型的なリスクオフと言えると思います。
そしてリスクオンになると株が買われて株価は上がり、為替は一般的に円安に、リスクオフになると株は売られて株価は下がり、為替は一般的に円高になります。
リスクオン・リスクオフ時の株価の動き
なぜ、リスクオン・リスクオフで株価が上下するかの説明をします。
まず、リスクオンの時は景気が良い状態です。
景気が良いと企業の収益が上がります。企業の収益が上がるとその企業の配当金は増える方向になることから、その会社の株式の価値が高まります。そのため買いが入り株価は上がる傾向にあります。
また景気が良いと株価が上がるので、株価が上がる前に買おうとする投資行動そのものも株価を上げる要因になります。
反対に、リスクオフの時は株は売られます。上記の反対で、企業の業績が悪化する可能性が高いことから株価は下落します。
(なお、リスクオン、リスクオフ時には債券価格(金利)も上下して投資行動に影響を与えますが、長くなるためここでは割愛します)
リスクオフで円が買われるのはどうして?
次に、リスクオンで円が売られ、リスクオフでは円が買われる理由について説明をします。
結論から言うと、基本的に円はリスクオフ通貨だからです。
つまり、リスクオフの時に買われる傾向があり(リスクオフは円高になる傾向)、
一方でリスクオンの時は売られる傾向にあります(リスクオンは円安になる傾向)。
なぜリスクオフの時に買われるのかは諸説ありますが…マーケットにおいてリスクオフになったら買うものと完全に認識されてしまっているので、そういうものだと思うのが一番手っ取り早いと思います。
(一般的には、低金利である円でお金を調達して高金利通貨に投資して運用している状態がリスクを取れる普通の時の状態であることから、有事の時には巻き戻しが入るため、なんて説明されたりもしています)
以上をまとめると
リスクオンでは
株高、円安
リスクオフでは
株安、円高
になりやすいと言えます。
(図6:リスクオン・リスクオフ時の株価と為替のまとめ)
リスクオン | リスクオフ | |
株価 | 上がる | 下がる |
為替 | 円安 | 円高 |
最初の質問「ドル円が下がると株価も下がるのですか?」について改めてお答えしますと、ドル円が下がっていると言うことはつまり円高になっていますから、一般的にリスクオフの局面であると言えます。
ゆえに、リスクオフならば景気を後退させる要因があると見なされていますから、株価も下がりやすいと言うことになります。
日本株は円高の時に下落する!
なお、日本株に関してですが、日本は輸出企業が多い関係で、円高そのものが日本株の業績を悪くすると考えられるため株安の要因となります。
なぜ円高が輸出企業の業績を悪くするのか具体例を出すと、ある自動車会社が米国で車を20,000USDで売っていたとして
①1ドル75円の円高の時
75円×20,000ドル/円=150万円の売上
②1ドル125円の円安の時
125円×20,000ドル/円=250万円の売上
となるように、円高①の時の方が、海外で売り上げて発生する外貨を円転(外貨を円に代えること)した時の売上は小さくなります。
日本の代表的な株価指数である日経平均株価において、輸出企業の割合は大きいです。そのため、ドル円が下がると円高の影響を受けて日経平均株価も下がる傾向にあります。