イタリアの政治・財政問題とユーロへの影響

今年2018年の5月にイタリアの政治問題とそこから派生した財政懸念によってユーロが暴落する局面があり、あれから状況がアップデートされています。

改めて現在のイタリアの置かれている状況、それがユーロへ及ぼしている影響、そして今後のユーロの値動きにどのような影響を及ぼす可能性があるのかについて解説します。

現在のイタリアの政治・財政問題

9月末からユーロが大きく下落しています。

2018年9月末以降のユーロドルチャート

その理由はイタリアの財政懸念によるものです。今後のイタリアが借金拡大路線になることを警戒してイタリア国債が暴落して、ユーロも売られる展開になっています。

過去にも、今年2018年の5月にイタリアの政治問題とそこから派生した財政懸念によってユーロが暴落する局面がありました。

2018年の5月にイタリアの政治問題とユーロ下落

あれから状況がアップデートされています。

現在のイタリアの連立与党

現在イタリアは、以下の二つの政党による連立与党が政権を担っています。

  • 五つ星運動
    2009年にコメディアンが作った大衆迎合主義(ポピュリズム)政党。昔からの体制に対して反対の姿勢を強く、インターネットを利用する若者を中心に支持されている。
  • 同盟
    移民排斥やEUからの離脱などを主張する極右政党。

これら2つの政党は国民の支持は高いものの、政治経験が豊富ではない人材も多いです。
6月の連立政権発足以前から、与党になったとしても政権運営能力があるのかどうかを金融市場からは疑問視されていて、特に財政懸念が最大の心配要因でした。

具体的には、国民の支持だけは高まるような政策を実施する、国の借金が拡大することを考慮しないような政権になってしまうことに対して強い警戒感を持っていました。

上記リンク先は今年5月に書いた記事ですが、この時もユーロが大きく売られています。
そして、その売られた要因こそがまさに、この「五つ星運動」と「同盟」の連立政権に対する財政懸念によるものでした。

来年度予算案の発表により、再びイタリア国債が売られて金利は急上昇

連立政権発足前にも、イタリア国債が大きく売られて金利上昇することがありました。
(詳細は省きますが、国債は売られて価格が下落すると金利が上昇します)

イタリア10年債金利の直近1年チャート

上のリンクでも紹介した、5月の時がそれにあたります。

6月に連立政権が発足して以降もなだらかに金利が上昇する流れになっていたものの、9月末にその金利上昇のスピードは更に加速しました。

イタリアの来年度の予算案における財政赤字の対GDP比率が2.0%程度に収まると市場が予想していたのに対して、9/27の欧州時間終了後、実際にこの連立政権が発表したものは2.4%という数字でした。
予想よりも赤字額が拡大することへの財政懸念からイタリア国債が売られる展開になって、金利は急上昇したのです。

イタリアの来年度予算問題がユーロに及ぼす影響

今後は10月15日までにEUに対してこの予算案を提出して、その承認を得てから実際に来年度の予算として成立する流れになります。

現在の予算案がそのままEUに承認される可能性もありますが、それでもイタリアが財政拡大路線であることには変わりはありません。
また、15日の提出前に、財政赤字を抑えた新たな予算案にイタリア政府が変更する可能性もあるかもしれませんが、金融市場のこのイタリア予算問題への警戒感は、現在の段階では非常に強いものとなっています。

EUに承認されないとなると、イタリア政府とEUの関係が悪化する可能性があり、それはユーロのリスクオフ要因として意識されています。
そして、最悪のシナリオは、EUが予算案を承認しないことによって、元々反EUを掲げている政党の「同盟」が、EUに対する反発を更に強めてしまうことです。

その結果、英国のようにイタリアからもEU離脱の声が上がっていくようなことがあれば、ユーロ圏が混乱に陥ることは必至です。
更に、同盟がもしこのことで連立を組む五つ星運動と足並みが揃わず、連立政権から脱退することになれば、過半数を獲得する与党が不在になることから再び選挙がおこなわれる可能性が高まります。
もしそうなった場合には、同盟が更に議席を伸ばす可能性も高く、イタリアの政治はより不透明になっていく可能性が高まります。

最終的にどうなるにせよ、しばらくの間はこのイタリアの来年度予算問題というのがユーロ相場において重要な問題として扱われることになりそうです。

イタリア国債の金利上昇がユーロの下落要因になる理由

イタリア国債の金利上昇はイタリア国債の価格下落を意味します。
現在、イタリアに限らずユーロ圏の様々な国の銀行等の金融機関がイタリア国債を保有しています。
そのためイタリア国債の価格が下落すると、ユーロ圏の様々な国の金融機関の経営状態の悪化につながります。

また、イタリア国債の金利上昇は、当然イタリア政府の借金の借入金利の上昇を意味するので、イタリア政府が資金を調達するときの更なるコストの上昇を意味します。

国債金利が上昇するとイタリア政府は財政が悪化しやすい体質になります。
かつてのギリシャ危機のように、ユーロ圏に所属するどこかの国の財政が悪化すると圏内全体のリスクオフとなり、結果的にユーロが売られる可能性があります。