なぜトルコリラは下落しているのか、その原因・要因を徹底解説(上)

最近のトルコリラの値動き

2018年8月、トルコリラ大暴落

2018年8月、トルコリラが大暴落しました。
トルコリラは対円で7月末には22円50銭付近の水準に位置していましたが、8月10日に20円を割り込んでから一時は15円付近まで下落が進み、8月20日現在も18円付近で推移しています。
トルコリラ円は年初の段階で既に史上最安値の30円付近で取引されていましたが、そこからおよそ40%近く価格が下がった計算になります。

 

トルコリラは最近だけではなく、この10年間下落し続けている


トルコリラ円の下落は今年に入って相当な勢いで進みましたが、そもそもトルコリラ円はこの10年間を振り返ってみても大きな下落が続いていました。

上図の通り、リーマンショック直後の2008年後半から2010年にかけては60円付近に位置していたものの、徐々に値を切り下げ、2016年に40円を割ってからは右肩下がりに下落が続いています。

今回の解説においては、

  • ここ数年、トルコリラの価格が下落し続けていたのはなぜか
  • なぜ2018年になってその下落に拍車がかかったのか
以上のように、2段階に分けてトルコリラが下落した要因の解説を行ないます。

ここ数年、トルコリラの価格が下落し続けていたのはなぜか

ここ数年の間、トルコリラが売られ続けていた理由は主に以下の4つが挙げられます。

  • 1:経常収支が恒常的にマイナスである
  • 2:インフレ率が非常に高い
  • 3:地政学リスクが高まっている
  • 4:エルドアンの政治
それではこれらを一つずつ解説していきます。

1:経常収支が恒常的にマイナスである


このチャートはトルコの経常収支の推移です。

経常収支とは、モノの輸出と輸入の金額の差である貿易収支に加えて、サービスの輸出と輸入の差額や、海外への投資と海外からの投資の金額の差などを加えたものです。

自国から他国に対するモノやサービスの輸出金額が輸入金額を上回っていたり、自国から他国へ投資する金額が他国から自国への投資の金額よりも大きかったりすると経常収支は黒字になります。
その逆の状態だと経常収支は赤字になります。

そしてチャートを見ると、トルコは恒常的に経常収支が赤字なのが分かると思います。
このように、トルコは他国へ輸出する金額より輸入する金額の方が大きいことから、他国へ輸出して得た外貨を自国通貨に戻すためのトルコリラ買いよりも、他国から輸入するためにトルコリラを売って外貨を買うトルコリラ売りの方が金額が大きくなりやすい経済構造をしています。

そのため、恒常的にトルコリラを売る取引が多くなりやすい、経常収支が赤字であるということがトルコリラ安につながっているのです。

2:インフレ率が非常に高い


上のチャートはトルコの消費者物価指数の前年比の推移です。

トルコは非常に早いペースで経済成長していますが、インフレ率(物価上昇率)は更に早いペースで上昇しています。
インフレ率が上昇している局面においては、お金と言う形で資産を保有していると機会損失が生まれます。

例えば、不動産が毎年10%の価格で上昇している時に、銀行にお金を預けていて5%の利息が貰えたとしても、資産が拡大するのは不動産を保有している時です。

また、不動産のような高級な買い物ではなくても、身の回りの生活必需品が日々価格上昇するような状況ならば、値段が上がる前にそれらの品を仕入れておかないと高くなってから買うことになってしまいます。
つまり、インフレ率が高い状況においては、お金と言う形で保有するよりも何かモノを購入して保有している方が有利になります。

トルコは2009年以降、平均で年間8%以上のペースで物価が上昇し続けてきて、特にここ2年は10%を超えるようなペースで物価が上昇し続けています。
そのため、トルコリラを売って資産を不動産などのモノにして保有しようという動きが強くなっています。

すなわち、インフレ率が急激に加速することによってトルコリラ売りが進んでいることがトルコリラ下落の背景にあります。

3:地政学リスクが高い

地政学リスクとは、ある国や地域が抱える戦争や紛争あるいはテロなどが起こるリスクのことを指します。

トルコはシリアと隣接していて、シリアはかつてイスラム国(IS)の大きな拠点があったことから、2010年代中盤にはISによるテロも頻発していました。
また、トルコの人口の約2割はクルド人であり、一部のクルド人はクルド労働者党(PKK)という組織を作ってトルコからの分離・独立を主張しており、こちらもトルコ政府と幾度となく衝突してきました。

ISは近年シリア周辺で弱体化していることから、一時期に比べてトルコ国内でテロを行なうことは減ってきたものの、トルコ政府とクルド人の衝突は増えています。

これは2015年以降、現在のトルコ大統領のエルドアンが和平路線ではなく、積極的にクルド人に勢力に対して軍事的攻撃を加えるなど、敵対的姿勢を強くしていることが背景にあります。
そのため、現在もトルコはシリア国内北部にあるクルド人組織をテロであると認識して攻撃を繰り返し、トルコ国内外で軍事的衝突が繰り返されています

このような地政学リスクの高まりもトルコリラを売る要因になっています。

4:エルドアン大統領の政治

トルコの大統領であるエルドアンは2003年から2014年まで首相を務め、2014年からは現在の大統領職に就いている、トルコ政府の最大の権力者です。

トルコの経済は2000年代前半は低調でしたが、00年代半ば以降に大きな経済成長を成し遂げました。
これが彼の首相時代の功績と評価されていることや、熱心なイスラム教徒や保守層の支持が非常に高いこともあり、彼は今年6月の選挙で見事に再選を果たしました。

国民の支持は高いものの、彼の行なう政治に対する海外の評価が高いとは言えず、特に金融市場の参加者からは、彼の政治は将来のリスクとして認識されている節があります。
上述の通り、トルコはインフレ率が非常に高く、本来ならばそれを抑えるために利上げなどの金融引き締めを行なう必要があるのですが、彼は利下げを行なうべきだと度々主張します。

確かに金利を引き下げることは、消費及び企業の投資が増えることから景気の拡大に寄与しますが、インフレ率がさらに上昇するというリスクが高まります。
そして、利下げを行なうということは、トルコへの投資リターンを低下させることからトルコリラ安へと繋がります。
また、彼が大統領になってから、政府に反対する勢力に対して積極的に軍事行動を行なうようになったことも、地政学リスクを高めてトルコリラ安に繋がっています。

そして、先月7月には、国の要職である財務相に自身の娘婿を据えるということが発表されましたが、これに対して金融市場は危機感を感じてトルコリラ売りで反応しました。
彼の独裁色が強くなっていくこともトルコリラにとってはマイナスに働いているのです。

以上のように、彼の政策志向はトルコリラにとってポジティブではない側面が多いことが、最近のトルコ安を加速させる要因になっています。

少し長くなってしまったので、記事を分割しました。
続きは下記リンクからお読み下さい。なぜ2018年になってその下落に拍車がかかったのか、そして今後トルコリラはどうなるのか、トルコリラロングのリスクについて解説しています。