英国が抱える「合意なきEU離脱」のリスクとは?【足下のポンドの下落要因】

2018年8月、ポンドの下落が続いています
5月以降1.30台前半で膠着する時間が長く続いていましたが、今月はそこから一段安の展開となっています。現在はついに大台の1.30を割り込み、対ドルで1年振りの安値である1.28台まで下落しました。

直近3か月のポンドドルのチャート。今月に入って1.30台を割り込んだ

最近の主要国通貨の中では特に激しい値動きをしていて、日本人の個人投資家にも人気が高いポンドが、なぜこのような動きをしているのか、今後どのようなことが焦点になっていくのか、初心者でもわかるように今回はまとめました。

今、ポンドを取り巻く環境に何が起きているのか

8月になってからポンドが一段安になっている要因は、8月2日に利上げを実施したものの、ファンダメンタルズの悪さゆえに次回の利上げがまだ先であるとの観測が高まっていることも一因です。
しかし、一番の原因は英国がEU離脱をするに際して、「合意なきEU離脱(合意なき離脱)」になってしまうリスクが高まっていることが材料視されていることです。

この話の深堀りをする前に、そもそも英国のEU離脱問題について基本的な内容から解説します。

2016年に英国がEU離脱を決定した時の動きの振り返り

 

英国のEU離脱が英国経済に与える影響

まずは発端となった2016年の国民投票の話をします。

この5年間の間にポンドは大きく下落していますが、特に大きく下がった年は2016年です。
2016年に何があったのかというと、同年6月23日に英国が国民投票の結果、EUから離脱することを決定したのです。

英国にとって、EUから離脱することによって移民の問題等でメリットがあることにはあるのですが、マーケットからはデメリットの方が注目されました。
また実際に離脱が国民投票で決まってからは、国民の間でもデメリットの方が大きいと認識されるようになっているようです。
では具体的にデメリットを述べていきます。

例えば、今現在は近隣のEU所属の欧州諸国と関税を設けることなく通商を行なえていますが、英国がEUから離脱した場合には関税がお互いに適用されるため、貿易活動が縮小して経済も縮小する可能性があることが挙げられます。

また、今までは世界的な金融機関は欧州の拠点を英国のロンドンに置くのが一般的でしたが、英国がEUから離脱した後は、英国からEU域内の金融市場へのアクセスが税制面や法律面から難しくなります。
そうなると、最近、欧州の拠点をドイツやフランスに移転させる動きが続いているように、EU離脱によってロンドンが果たす金融センターとしての役割が低下していくことも、英国経済にとっては悪影響です。

国民投票の結果を受けてポンドドルは1800pips近く下落

話を国民投票の日のポンドに戻します。
国民投票でEUの離脱が決まる前日は、

まさか国民投票で離脱支持が残留支持を上回る訳がないだろう

との予想が多く、ポンドドルは1.50付近に位置していました。
しかし、予想に反してEU離脱を支持する票が過半数を上回るという結果が開票されると、上述したような英国のEU離脱による景気後退懸念が高まって、ポンドはパニック的に1日で1800pips近く売られたのです

2016年6月23日前後のポンドドルチャート。国民投票の結果を受けて、1800pips近く下落した。

その後も、今後の先行き不透明感から、2016年後半にかけてポンドの上値は重くなり、同年10月には一時1.165付近まで瞬間的にポンドドルの価格が下がるような場面がありました。

2017年以降は、利上げを実施したこともあって、ポンドドルは底を打って2018年4月には一時1.435ぐらいまで買われたものの、依然として英国経済の先行きを悲観的に捉える人は非常に多くなっています。
今となっては英国国民の半数以上がEUを離脱するべきではなかったと2016年の決定を後悔していて、可能ならば再び国民投票をするべきだと思っているとのアンケートの結果も出ているようです。

合意なきEU離脱とは?2018年に再び注目されているBREXITの悪夢

 

No-deal Brexit (合意なきEU離脱、合意なき離脱)リスクが日に日に高まっている

先月2018年7月以降、世界である言葉が注目されています。
それは、「No-deal Brexit (合意なきEU離脱、合意なき離脱)」という言葉です。

英国がEUを正式に離脱する日は、来年2019年3月29日の予定です。
その日までに英国がEUを離脱した後に、人が行き来するときのチェックをどうするかという点や、輸出入品の関税をどうするかなどの様々な規定を定めなければならないのですが、まだ英国とEUの間で合意に至っていないことが多すぎるのが現状です。

英国は、現在の与党でありメイ首相が所属している保守党と、最大野党である労働党の二大政党制の国です。
そして、昨年の選挙以来、労働党が議席を伸ばしていることもあり、EU側とどのような協定を結ぶのかという意見が英国内で議論する段階で、既に意見が割れているようなことも多い状態になっています。
現在、このままEUと様々な規定を合意することなく、EU離脱の日を迎えてしまう(No-deal Brexit (合意なきEU離脱))というリスクが非常に高まっているのです。

7月の段階では、メイ首相が
「合意ないままEUを離脱することにはならないだろう」
などと述べていましたが、今月になってからは状況が変化しつつあります

フォックス国際貿易相が「60%の確率で合意なきEU離脱になってしまう」と述べたり、
カーニーBOE総裁が「合意することなく英国がEUから離脱する可能性は気持ち悪いほど高い」などと述べています。

また、メイ首相が合意なきEU離脱になった際に、どのような対策を講じればいいのかの話をする閣僚会議を来月実施する予定であるとの観測記事もリリースされました。
英国が貿易等の様々な点でEUと合意せずに離脱を迎えてしまい、その後の景気が低迷してしまう可能性が、8月になってマーケットで強く意識されるようになってきてるのです

今後の英国のEU離脱に関する動向には要注目

来年3月の正式に離脱を行う日まではまだ時間があると言うことは出来ますが、期限が刻一刻と差し迫っていることも事実です。
2016年も国民投票に向けた警戒感から、年明けからポンドが大きく売り込まれるような場面があったように、今回も合意なき離脱のリスクが今後高まっていけばポンドは更に売りこまれるような可能性は高いでしょう。
これからポンドをトレードするのであれば、今後の英国のEU離脱に関する動向にしっかり注目していかなければいけません。