リスクオフなのにドル円が売られなくなっている要因とは?【最近の相場傾向】

金融危機懸念が再燃するとリスクオフ(リスク回避)となり、株式から比較的安全とされる日本円(日本国債)などに投資家の資金が向かいます。教科書的にはドル売り、円買いとなりドル円が下落傾向にあります。

ですが、最近の相場を見るとリスクオフ場面でドル円が売られなくなっています。それについてお話ししたいと思います。2018年7月14日に作成した記事になります。

 

最近のドル円について

7月9日から13日の週は、主要通貨の中で、USDが最もパフォーマンスが良く、ドルの独歩高の展開になりました。

そして、ドル円は7月11日深夜、5月21日につけた高値である111.39を上抜けて、1月前半以来となる112円の大台を突破、最終的にドル円は7月13日金曜日には112.80という水準まで上昇しました。

USDJPY(1時間足)

ドル円の上昇要因

私自身、6月下旬110円付近にいる時から中長期的に108円を目指すと述べてきましたが、その考えは完全に間違いだったと言えます。

ここからは、今回のドル円の上昇に関して考察をしていきたいと思います。

【CFTC:円ポジションのリンク】

シカゴの先物のポジションだけで言えば、6月以降は円ショート(ドル円ロング)が積みあがる流れになっていました。

しかし、過去に円高と相関の強かった中国株が暴落していて、また米国の世界各国に対する貿易問題が懸念される中、リスク回避から円高になると考えていたポジションや、ドル円をアンダーウェイトにするような動きが今週前半の時点では非常に多かったと推測しています。

そして実際に、国内外の機関投資家と話をする中で、ドル円に先安観を見出しているような人が自分の周りには非常に多かったように感じていました。

USDJPY(日足)

3ヵ月弱にわたって108-111円のレンジ内で推移、6月以降ほとんどの時間は110円台で推移していたこともあり、5月につけた高値である111.39を超えた111.40付近から112円にかけては、
・ドル円ショートのロスカット
・押し目を待っていた市場参加者が諦めてドル円を買うようなフロー
こういった動きをかなりの量巻き込んだのではないかと予想しています。

上述の7月11日にドル円が112円に到達した日の、そもそものドル高のきっかけは原油価格が下落したことによって資源国通貨である豪ドルやカナダドルが売られた反対で、ドル買い圧力が強くなったことのように思えます。
しかし、その後のドル円の乱暴的な上昇には、このような需給的な要因が非常に強かったのだと解釈しています。

 

リスクオフで円が買われなくなった?

今週に関わらず、最近は米国の中国を中心とする貿易摩擦のヘッドラインが出てくる時にドル円が下落しないことが多く感じます。

今年3月にドル円が104円台まで下落したときは、まさにこの米国の貿易摩擦に関するヘッドラインが出た直後であり、春先は米国の通商問題でトランプが強硬姿勢を示したようなタイミングでは、世界的に株が売られると同時に為替は円高方向に推移することは非常に多かったです。

 

しかし、最近はその流れが変わってきているように感じます。

以下は今週の記事ですが、

【Bloomberg】円は貿易戦争からの逃避先にならず、伝統的な相関崩れる

【日本経済新聞】米中貿易摩擦、なぜドル高・円安進む?

これらの記事にもあるように、最近は米国の貿易問題が出てきても、ドル円が下がらないことを話題に出す人が増えてきています。

 

そして私自身も最近の相場を踏まえて、今後は貿易問題に関わらずリスクオフ材料が出てきたからといって、必ずしもドル円が下落するとは限らないと現在考えています。

 

そもそも教科書的には、リスクオフの時に買われる通貨は円でありスイスフランであることはもちろんですが、米ドルもリスクオフの時に買われる通貨に含まれています。

リスクオフの時は、欧州通貨やオセアニア通貨、そして新興国通貨が売られる反対で、ドルも買われる流れになるのが一般的なものの、ドル以上に円が買われることが多いためドル円は下落することが多いにすぎないと言えるでしょう。

 

ドルは基軸通貨なだけではなく、言わずもがなリスクオフ通貨なのです。

 

リスクオフになった時に、ドル円が売られる(ドルよりも円の方が買われる)流れが加速し始めたのは、2001年の米国の同時多発テロ以降であり、その流れが特に強くなったのは2008年のリーマンショック以降だと個人的に思います。

いずれも米国がリスクオフの震源地になっていたこともあり、この時期にリスクオフの事象が生じてもドルを買うよりも円を買うような流れが生じたということを一因として挙げられるかもしれません。

 

さて、最近の世界情勢をみると以下のような観点から、米国経済の独り勝ち感が否めません。

  • 米国は先進国で最も株価がアウトパフォームしている
  • 米国は景気上昇に伴い消費が増えていて、順調に利上げプロセスを進んでいる

世界中の先進国の多くは、デフレに悩み緩和的な金融政策を継続し続けています。
一方、消費が活況であり相対的に高金利な米国は、景気が良いからこその安全な国とも言うことが出来ると思います。
明らかに、企業単体の業績で見てみても日本や欧州に比べて、最近は米国の方が明るいニュースは多く、暗いニュースが少ない印象を私自身受けています。

こういった状況を踏まえると、リスクオフの時に円よりもドルを優先して買うような動きが生じることも納得できるのではないでしょうか。

よくリスクオフ局面で円高になる理由として、 円キャリートレード の巻き戻しが入ることから円高になると解説することは多いものの

「リスクオフになると円高になるから、その前に円高にポジションを取る」

というようなトレード心理そのものが、円高の流れを大きくしていると私は常に考えています。

 

「リスクオフだけど、ドル円が下がるとは限らない」

このような考え方が浸透すればするほど、この15年ぐらいの間に当たり前のようになっていた、リスクオフ=ドル円下落という流れは弱くなる可能性があるのではないでしょうか。

 

現在は、今までのようにリスクオフだからといってドル円が下落するというのはいったん考え直してもいい時期なのかもしれません。

6月下旬からドル円はここでも何度か書いてきた通り、中長期的にドル円は下落すると考えていたが、その考えは完全に間違えていました。

自分自身の考えが、間違えていたことの背景にはたくさんの理由があると思いますが、その一つに
「貿易摩擦はじめリスクオフ材料に対する、円の反応」
を間違えていたことがあると思います。

今後しばらくの間は、リスクオフ材料が多いからといって単純に円高方向にポジションを取ることに対しては慎重になろうと考えています。